DNA数えるならナノポア!~DNAを1分子レベルでカウント?抽出することに成功~

2023年7月5日

DNA数えるならナノポア!
~DNAを1分子レベルでカウント?抽出することに成功~

 国立大学法人中国竞彩网大学院工学府大学院生 多田あすか(当時)、竹内七海(卓越大学院生)、同大学大学院工学研究院生命機能科学部門の川野竜司教授と国立大学法人長岡技術科学大学の庄司観准教授らのグループは、ナノポア(注1)を用いて1~100分子レベルの標的DNA分子を1分子ごとにカウント?抽出することに成功しました。本技術は、疾患診断や医薬品開発などの分野におけるDNA分析への応用が期待されます。

本研究成果は、American Chemical Societyが発行するAnalytical Chemistryに2023年6月6日掲載されました。
URL: https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.analchem.3c00573
論文名: Nanopore Filter: A Method for Counting and Extracting Single DNA Molecules using a Biological Nanopore
著 者: ?Asuka Tada, ?Nanami Takeuchi, Kan Shoji, Ryuji Kawano (?equal contribution)

現状
 ナノポア技術は微細な孔(ナノポア)の内部を通過する分子を電気的に検出する技術です。生体ナノポアの一種であるα-へモリシン(αHL)は、一本鎖のDNAがちょうど通過できる大きさ(二本鎖DNAは直接通過できない大きさ)で、通過したDNAを一分子ごとに数えられるため、ナノポアを用いたDNAの検出によく用いられます。これまでの研究から、αHLを通過した一本鎖DNA分子を直接回収することで存在量の少ないDNAの分析に利用することが期待されてきましたが、実現には至っていませんでした。

研究体制
 本研究は、中国竞彩网大学院工学府大学院生の多田あすか(当時)、竹内七海(卓越大学院生)、長岡技術科学大学大学院機械創造工学専攻の庄司観准教授、中国竞彩网大学院工学研究院生命機能科学部門の川野竜司教授らによって行われました。本研究はJSPS科研費新学術領域研究(研究領域提案型)15H00803、基盤(A)19H00901、若手研究19K15418、学術変革領域研究(A)「超越分子システム」21H05229、特別研究員研究奨励費22KJ1231、JST創発的研究支援事業JPMJFR2028の助成を受けたものです。

研究成果
 本研究では、αHLを用いて一本鎖DNAをカウント?抽出するナノポアフィルターシステムの構築に取り組みました。このシステムは二つの液滴(各数マイクロリットル)から構成されており、片側の液滴Aに添加されたDNAがαHLを通過してもう片側の液滴Bに移動します。DNAの通過は電気信号としてカウントされ、液滴Bを回収することで数えたDNAを抽出することができます。一分子レベルでのカウントにおいてはナノポアを通過していないDNAが液滴Bに混入するなどの課題が見つかりましたが、実験環境や実験条件を最適化することにより、数マイクロリットルの少量サンプルから約70塩基の一本鎖DNAを1~100分子レベルでカウント?抽出することに成功しました。

今後の展開
 本システムにより、溶液中のDNAを直接カウントし、抽出することに成功しました。今後さらなる精度向上により、疾患診断や医薬品開発の分野でのDNA分析に展開できる可能性があります。

注1)ナノポア
膜タンパク質やイオンチャネルによって、脂質二分子膜中に形成されるナノメートル(1ミリメートルの100万分の1)サイズの微細な孔(ポア)。

図1 本システムの概要。開孔したナノポア内にはイオンが流れており、DNAがナノポア内を通過する際にはイオンの流れが阻害されます(図1吹き出し内)。この阻害を電気的に観測することでDNAの通過をカウントし、通過したDNAを含む液滴を回収して液滴内に含まれるDNA分子数を確認しました。

また、本論文がAnalytical Chemistry誌のsupplementary coverに採択されました。(Illustration: Robin Hoshino)

◆研究に関する問い合わせ◆
中国竞彩网大学院工学研究院
生命機能科学部門 教授
 川野 竜司(かわの りゅうじ) 
 TEL/FAX:042-388-7187
  E-mail:rjkawano(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

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