タイワンカモシカは世にも奇妙な木登りカモシカだった

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タイワンカモシカは世にも奇妙な木登りカモシカだった

ポイント

• 偶蹄類は地上を速く走るように進化した大型草食獣であり、その中で木登り行動が知られているのはわずか7種（2％）のみです。本研究はソーシャルメディア上の画像を収集して、タイワンカモシカが木登り行動をおこなうことを世界で初めて明らかにしました。
• 台湾の様々な地域?環境?季節で木登り行動が確認され、低木の枝だけでなく高木の幹をも対象に、高さ60㎝から4mの位置まで登ることが確認されました。
• 得られた画像データのうち53.3％で樹上での採食が確認されたことから、樹上の葉を採食することを目的に木登りしていることが示唆されました。　
  
  

概要
　国立大学法人中国竞彩网 農学部附属野生動物管理教育研究センターの髙田隼人特任准教授と国立屏東科技大学（台湾）のNick Ching-Min Sun助教授およびJen-Hao Liu氏、新竹市林業自然保護課のChing-Kuo Liu博士、台湾野生動物学会のYu-Jen Liang博士およびKurtis Jai-Chyi Pei博士らの共同研究チームは、台湾の森林に生息するタイワンカモシカの画像および映像を複数のソーシャルネットワークから収集し、本種が偶蹄類（注1）では非常に稀な「木登り行動」を行うことを世界で初めて明らかにしました。
タイワンカモシカは日本に生息するニホンカモシカにとても近い仲間で、ウシ科のなかでもヤギやヒツジと近縁なグループ（ヤギ亜科）に属します。タイワンカモシカは亜熱帯気候に位置する台湾の深い森の中に生息するため調査研究が難しく、その行動や生態については多くが謎に包まれています。
　本研究では、木登りをしているタイワンカモシカの画像もしくは動画データをFacebookおよびYouTubeから収集し、その地域や標高、時期や時間帯、木登りをした樹種や高さ、幹の太さ、樹上での行動など、データから読み取れる最大限の項目を記録しました。その結果、15例の画像から木登り行動が確認されました。木登り行動は台湾の南部（屏東）、北部（新竹）、中部（台中）、東部（台東）までの幅広い地域、標高200m以下の亜熱帯雨林から標高3500mの亜高山帯針葉樹林までの多様な環境で観察されました。また、四季を通じて、昼夜ともに木登り行動が観察されました。このことから、タイワンカモシカの木登り行動は年間を通じて幅広い環境でみられる一般的な行動であることが示唆されました。タイワンカモシカが木登りをおこなった樹種は常緑針葉樹と常緑広葉樹を含む合計10種で、低木の枝だけでなく高木の幹をも対象に登ることが出来ることが示されました。木に登った高さは、地上高60㎝から4mまで確認されました。また、得られた画像データのうち53.3％で樹上での採食が確認されたことから、樹上に生える葉を採食することを目的に木登りをおこなっていることが示唆されました。

今後の展開
　本研究ではソーシャルメディア上の画像を利用することにより、タイワンカモシカが偶蹄類としては世にも珍しい木登り行動をおこなうことを明らかにしました。偶蹄類は約380種から構成されますが、木登りをおこなうことが報告されたのはタイワンカモシカで8例目です。タイワンカモシカがこの珍しい木登り行動をなぜ進化させてきたのかを探るためには、今後、いつ、誰が、どこで、どのように木登り行動をおこなうのかを明らかにしていく必要があります。さらに、髙田特任准教授はタイワンカモシカと近縁なニホンカモシカの行動と生態を長年研究していますが（プレスリリース：高山草原のカモシカはプレイボーイ？～生息環境によって変わるカモシカの恋愛事情～、/outline/disclosure/pressrelease/2022/20230307_01.html ）、ニホンカモシカでは木登り行動を一度も観察したことがありません。今後、カモシカの仲間（カモシカ属）の種間で形態や行動の比較をおこなうことで、木登り行動の進化について探っていくことが出来ると期待されます。

用語解説
注1）ウシやシカをはじめとした蹄が2本もしくは4本に分かれる草食動物を含む分類群。

◆研究に関する問い合わせ◆
 中国竞彩网農学部附属野生動物管理教育研究センター
 　特任准教授
　 髙田　隼人（たかだ　はやと）
　 　TEL：042－367－5826
　 　E-mail：takadah（ここに＠を入れてください）go.tuat.ac.jp

• プレスリリース（PDF：740.7KB）