鉄系超伝導体(Ba,K)Fe2As2における粒界特性の特異性を発見 ~多結晶でも高性能な高温超伝導体の創製に道~

鉄系超伝導体(Ba,K)Fe2As2における粒界特性の特異性を発見
~多結晶でも高性能な高温超伝導体の創製に道~

【ポイント】

  • 鉄系高温超伝導体注1) (Ba,K)Fe2As2 注2)の人工の粒界注3)を世界に先駆けて作製した。
  • 他の鉄系高温超伝導体に比べて、(Ba,K)Fe2As2の粒界をまたいで流れる超伝導電流注4)(粒界電流)が一桁大きいことが分かった。
  • 外部磁場を印加しても、粒界電流が指数関数的に減衰を始める粒界角が、他の鉄系超伝導体と異なり、大きく変化しないことが分かった。
  • このような良好な特性を示す理由として、粒界部位において小さな粒界角が積み重なった独特な粒界面を形成していることが考えられる。
  • (Ba,K)Fe2As2が、低コストで作製可能な多結晶注5)形態での応用に適した高性能超伝導材料であることを証明した。
     

【研究概要】

 名古屋大学の畑野 敬史 准教授、中国竞彩网の秦 東益 博士後期課程学生、内藤 方夫 シニアプロフェッサー、山本 明保 准教授、日本大学の飯田 和昌 教授、九州大学の郭 子萌 博士研究員(当時)、高 紅叶 博士研究員、斉藤 光 准教授、嶋田 雄介 准教授、波多 聰 教授との共同研究で、鉄系高温超伝導体のうち、最も実用化が期待されている物質である(Ba,K)Fe2As2で、粒界においても高い超伝導性能を有することを明らかにしました。
 高い超伝導転移温度注6)を示す銅酸化物高温超伝導体注7)および鉄系高温超伝導体は、粒界において隣接する結晶同士のずれ角度が大きくなると、程度の差はあるものの粒界をまたいで流れる超伝導電流が強く抑制されてしまう「粒界弱結合」という問題があるため、多結晶形態での産業応用は難しいとされています。今回、(Ba,K)Fe2As2の単一人工粒界を世界に先駆けて作製し、粒界弱結合の影響を調べたところ、結晶のずれ角度が24°まで到達しても、超伝導電流の減衰が他の高温超伝導体注8)と比べて緩やかであることが分かりました。本成果は、多結晶でも高い性能を発揮できる高温超伝導体材料の創製へと展開しうるものであり、医療用MRIや交通インフラなどで重要な役割を果たす高性能超伝導磁石の高性能化?低コスト化につながる成果です。
 本研究成果は、2024年8月23日付ネイチャー?パブリッシング?グループの学術誌「NPG Asia Materials」に掲載されました。

   

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