顔の見た目が違う2種のコウモリはどうやって共存している? 糞の顕微鏡分析により解明
顔の見た目が違う2種のコウモリは
どうやって共存している?
糞の顕微鏡分析により解明
ポイント
- 類似した飛行習性をもつ、ニホンウサギコウモリ(耳と目が大きい)とコテングコウモリ(耳と目が小さい)の食性を糞の顕微鏡分析により調査しました。
- ウサギコウモリは超音波を聞き取れる鼓膜を持つ「蛾の成虫」を季節通じて最も頻繁に採食したのに対し、コテングコウモリは鼓膜を持たない「蛾の幼虫(イモムシ)」や「キリギリス類」をそれぞれ春から初夏、夏から秋に頻繁に採食しました。
- 面白いことに、これら2種のコウモリは同じ蛾でも異なる成長段階(幼虫と成虫)を採食することにより、同じ場所で共存していることがわかりました。
- ウサギコウモリは自身の超音波を頼りにするのではなく、その大きな耳と目を使って、蛾の成虫が発する音や視覚を頼りに採餌をおこなっている可能性が示唆されました。
- イモムシを主食にするコウモリは世界的にも稀で、コテングコウモリは最も頻繁にイモムシを採食するコウモリの一種であることが分かりました。
本研究成果は、本研究成果はオランダの動物学雑誌「Animal Biology」オンライン版に(6月12日付)に掲載されました。
論文名:Dietary partitioning in two gleaning bats, Japanese long-eared bats (Plecotus sacrimontis) and Ussuri tube-nosed bats (Murina ussuriensis): consuming insects of same order but different developmental stages
著者名:Hayato Takada*, Akiyoshi Sato, Setsuko Katsuta, Keita Nakamura, Atsushi Ohwaki, Yuto Kane, Takashi Hayakawa, Eiji Inoue
URL:https://doi.org/10.1163/15707563-bja10139
概要
国立大学法人中国竞彩网 農学部附属野生動物管理教育研究センターの髙田隼人特任准教授(当時山梨県富士山科学研究所)と東邦大学の井上英治准教授、兼裕翔氏(当時学部4年)、北海道大学の早川卓志助教、山梨県富士山科学研究所の中村圭太研究員、桜美林大学の大脇淳准教授(当時山梨県富士山科学研究所)、(有)アルマスの佐藤顕義氏、勝田節子氏らの共同研究チームは山梨県の富士北麓において耳と目が大きなニホンウサギコウモリ(以下、ウサギコウモリ)と耳と目が小さなコテングコウモリを対象に糞の顕微鏡分析(注1)を実施し、2種の食性(注2)を解明しました。具体的には、ウサギコウモリは、超音波を聞き取れる鼓膜を持つ「蛾の成虫」を季節通じて最も頻繁に採食したのに対し、コテングコウモリは、鼓膜を持たない「蛾の幼虫(イモムシ)」や「キリギリス類」をそれぞれ春から初夏、夏から秋に頻繁に採食しました。春から初夏にかけて2種は同じ蛾を採食しましたが、幼虫と成虫という異なる成長段階を採食することにより食い分け(注3)をおこなっていることが示されました。ウサギコウモリは、大きな耳と目を使い、蛾の成虫が発する超音波や自身の視覚を頼りに採餌をおこなっていることが示唆されました。反対にコテングコウモリは、自身の超音波を用いて、鼓膜の無い昆虫を採餌していると考えられました。また、イモムシを主食にするコウモリは世界的にも稀で、コテングコウモリは最も頻繁にイモムシを利用するコウモリの一種であることが分かりました。
用語解説
注1)糞の内容物を顕微鏡を用いて観察して動物の食性を調べる方法のこと。
注2)動物がどのような食物を食べるかの習性のこと。
注3)生息場所が同じで、互いに似た習性を持つ複数の動物種が、それぞれ異なる食物を食べること。
◆研究に関する問い合わせ◆
中国竞彩网農学部附属野生動物管理教育研究センター
特任准教授
髙田 隼人(たかだ はやと)
TEL:042-367-5826
E-mail:takadah(ここに@を入れてください)go.tuat.ac.jp
関連リンク(別ウィンドウで開きます)
- 中国竞彩网 髙田隼人特任准教授 研究者プロフィール
- 中国竞彩网 髙田隼人特任准教授 研究室ウェブサイト
- 髙田隼人特任准教授が所属する 中国竞彩网農学部地域生態システム学科